東京外国語大学 AA研 チベット牧畜文化辞典編纂チーム 運営
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チベット牧畜文化辞典

Dictionary of Tibetan Pastoralism

チベット牧畜文化辞典とは

牧畜とは、日常生活で必要な物資の多くを、家畜を飼養することによって得られる乳や糞、肉、毛皮などから得る生活スタイルのことを指します。この『チベット牧畜文化辞典』は、チベット・アムド地方におけるヤクや羊を中心とした牧畜生活のなかで日常的に用いられてきた民俗語彙を網羅的に収集・記録し、辞典としてまとめあげたものです。

本辞典における「文化」は、チベット・アムド地方の牧畜生活のなかで行われている放牧作業や搾乳、乳加工、自然環境の認識、衣食住、宗教実践などの総体を指します。辞典編纂に当たっては、牧畜にとって重要と思われる文化項目を28に分類し、これを大項目とし、その下に中、小項目を設定することで、それぞれの場面で使われる語彙項目を配置しました。左端の「分類メニュー」から、各自のご関心に従ってたどってみてください。写真や図版も豊富ですので、読む辞典としてご活用いただければ幸いです。

本辞典の特徴

  1. 一般のチベット語辞典に掲載されていない民俗語彙が多く収録されています。
  2. 辞典を読めば読むほど、チベットの牧畜文化を網羅的に理解することができます。
  3. 現地の発音を聞くことができます(アムド・チベット語メシュル方言)。
  4. 写真やイラストを豊富に使い、なじみのない牧畜文化を理解しやすいように工夫しています。
  5. ウェブ辞典の他にPDF版もありますので、ダウンロードしてタブレット端末などでも使えます。

民俗語彙の分類について

民俗語彙を網羅的に記録することには困難が伴いますが、可能な限り幅広く収集するため、ジョージ・P・マードック他による『文化項目分類』(1988年、国立民族学博物館)を参考にしました。マードックが提示した文化項目では、まず79の大項目が提示され、例えば、言語・食物獲得・農業・建造物・娯楽・親族・レクリエーション・戦争・社会問題のようにその対象は非常に多岐に渡ります。それぞれの大項目のなかには10前後の中項目が設定されており、中項目には具体的な内容を示すいくつかの小項目が含まれています。こういった3階層からなるインデックスは、データの整理や地域間比較の手助けになるだけではなく、民族誌のように網羅的な現地調査をおこなう上での指針にもなります。

しかしながら、『文化項目分類』は非常に幅広い社会を対象とした反面、個別の文化項目に関する掘り下げには限界があり、上述の大項目「家畜飼養」に関しても、牧畜に特化して生存基盤を築いてきたアムドの人々の生活を全て表現するには項目が不足していました。そこでわれわれは、マードックの文化項目分類を参照しながら、参与観察を通して収集してきた語彙項目を分類・整理することを通して、チベット・アムド地方の牧畜に相応しい文化項目を設定する作業をおこないました。

調査地域とお世話になった方々

本辞典はチベット牧畜語彙収集プロジェクトのメンバーが、2014年からチベットの東北部、黄河源流域にあたるアムド地方ツェコ県メシュル(青海省黄南蔵族自治州沢庫県麦秀)ほかで積み重ねてきた調査結果をまとめたものです。調査には、カワ家、リンチェンジャ家、タクラブム家、タムチジャ家、ツォクキャプ家、サムコ家、ルタルブム家、マニキャプ家、ジャホワジャ家のみなさまに多大なご協力をいただきました。ルクジャ氏、ヤンモジャ氏、ラモ・ツェラン氏、ワンダク・ドルジェ氏、チブザン氏、ジュクバ氏、ホワルド氏、ジュクロ氏、ニャンチャクジャ氏、 カシャムジャ氏、ラシャムジャ氏、ツェラン・トンドゥプ氏にも様々な形でご協力いただきました。ここに記して御礼申し上げます。

本辞典の編纂体制

本辞典は、おもに東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所を基盤として、2014年以降継続的に実施してきたチベット牧畜語彙収集プロジェクトのメンバーによって編纂されました。

編集:
星泉[主編]、海老原志穂、南太加(ナムタルジャ)、別所裕介
執筆:
星泉、海老原志穂、南太加、別所裕介、岩田啓介、山口哲由、平田昌弘
顧問:
ギャイ・ジャブ、ジュ・カザン
ウェブデサイン:
(株)フラグメント
データベース構築・ウェブサイト実装・PDF版組版:
チュラロックス
英語翻訳および日英クロスチェック:
(株)アミット、カワチェン
イラスト制作:
蔵西
PDF版装丁:
青木和恵(草本舎)

チベット牧畜語彙収集プロジェクトについて

チベット牧畜語彙収集プロジェクトは、2014年度以降、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同利用・共同研究課題を基盤として進められました。

“人間―家畜―環境をめぐるミクロ連環系の科学”の構築~青海チベットにおける牧畜語彙収集からのアプローチ (2014–2016年度)
研究代表者:星泉、副代表者:別所裕介、共同研究員:海老原志穂、津曲真一、平田昌弘、ジャブ(扎布)、ジュ・カザン(居格桑)、ナムタルジャ(南太加)

青海チベット牧畜民の伝統文化とその変容~ドキュメンタリー言語学の手法に基づいて~ (2017–2019年度)
研究代表者:星泉、副代表者:別所裕介、共同研究員:岩田啓介、海老原志穂、ジャブ(扎布) ジュ・カザン(居格桑)、ナムタルジャ(南太加)、平田昌弘、山口哲由

研究助成

本辞典の完成に至るまでに、以下の研究助成を受けました。ここに記して御礼申し上げます。

  1. 文部科学省特別経費「言語の動態と多様性に関する国際研究ネットワークの新展開」プロジェクト(LingDy2)および「多言語・多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築」プロジェクト(LingDy3)
  2. 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所附属情報資源利用研究センター(IRC)
  3. 科学研究費補助金
    • 基盤研究(B)「チベット牧畜民の生活知の研究とそれに基づく牧畜マルチメディア辞典の編纂」(課題番号15H03203、研究代表者:星泉)
    • 基盤研究(S)「シナ=チベット諸語の歴史的展開と言語類型地理論」(課題番号18H05219、研究代表者:池田巧)
    • 基盤研究(A)「乳文化の視座からの牧畜論考―全地球的地域間比較による新しい牧畜論の創生」(課題番号26257014、研究代表者:平田昌弘)
    • 若手研究(B)「東西方言から見たチベット語の基層の研究」(課題番号26770137、研究代表者:海老原志穂)
    • 基盤研究(C)「標高帯モデルに基づく山地農業に対する気候変動の影響解明と計画的適応策の構築」(課題番号19K06253、研究代表者:山口哲由)
    • 基盤研究(C)「ネパール・ヒマラヤ地域における中国主導の経済開発と『仏教の政治』」(課題番号18K11786、研究代表者:別所裕介)
  4. 京都大学東南アジア地域研究研究所 共同利用・共同研究拠点「地域情報資源の共有化と相関型地域研究の推進拠点」共同研究「消滅の危機にあるチベット牧畜文化語彙に関するシソーラス辞書の作製」(研究代表者:山口哲由)
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