「ヤク絵合せカルタ」で遊ぼう!
「ヤクの名は。」ポータル版という記事でも紹介したとおり、チベットの牧畜民たちはヤクを区別するためにたくさんの名前(認識語彙)を使い分けている。これらの語彙は、家庭によっては100頭以上(ひと昔前なら200〜300頭以上)のヤクを管理するために用いられ、牧畜民にとって非常に重要な表現である。そのため、牧畜文化語彙を収集する中で、角の有無や形状、毛色や模様などのヤクの呼称についての記述研究も行ってきた。
この研究で得られたヤクの認識語彙を遊びながら学べるように、「ヤク絵合せカルタ」を2019年3月に製作した。都会に住む子供たちにも牧畜の文化を伝えたいという現地からニーズにこたえ、牧畜に関する語彙収集の成果の一部をチベットの言語・文化教育に役立てるために海老原が企画したものである。イラストは漫画家・画家の蔵西氏、カルタやケースなどのデザインは青木和恵氏(草本舎)による。
遊び方は、神経衰弱の要領で、全カードをよく切って裏返しにし、プレイヤーが2枚ずつひいていくというもの。同じカードが出た場合は、それを持ち札とし、さらに2枚のカードがひける。裏返されたカードが全てなくなったらゲーム終了。持ち札の一番多い人が勝者である。
チベット各地の他、アメリカ、フランス、インドでも教育に活かしたいと問い合わせがくるなど、一部で好評を博している。こちらのカルタは非売品のため、チベット人子弟向けの教育機関に優先的に配布している。現在、販売用の製品版をチベットで製作中であり、近日中に販売も開始される予定だ。
カワチェンの店舗、および、チベット・レストラン「タシデレ」に実物のカルタが展示されているので、お手にとってご覧いただくことが可能である。
(海老原志穂)
このカルタはJSPS科研費 (課題番号26770137, 15H03203) の助成、および、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同利用・共同研究課題「青海チベット牧畜民の伝統文化とその変容~ドキュメンタリー言語学の手法に基づいて」(2017-2019年度) の成果である。