草原のめぐみを食べよう その6 乾燥イラクサを使った料理
イラクサの乾燥保存
イラクサ(Urtica sp.)は半日陰になっている森の斜面などに自生する。8月頃には大きいもので1メートルほどにまで育ち、青々とした葉を広げる。それを収穫し、袋に入れてテントに持ち帰る。イラクサの茎や葉には白い産毛のようなトゲが生えているため、厚手のゴム手袋をはめて手でしごき、茎から葉をとりはずして水で洗う。一部はそのまま刻んで調理されるが、使いきれない葉は乾燥させて保存しておく。
乾燥イラクサを使ったクレープ
正月の挨拶に友人の家を訪れた際に、乾燥イラクサのクレープが供された。乾燥イラクサのクレープとは、イラクサのニョクを小麦粉で作った薄焼きパンで包んだものである。ニョクとは牧畜民の伝統的な食べ物のひとつで、大麦や豆、小麦などの粉に水分を加えて混ぜ、糊状にした食べ物である。イラクサのニョクは、小麦粉 (またはツァンパ)、粉にした乾燥イラクサ (「ツォプシ」と呼ばれる) に、塩、そして水を加えて練って作る。肉が加えられることもある。
ちなみに、この時訪れた友人宅では、健康茶として、乾燥イラクサに冬虫夏草を数本入れたお茶も出してくれた。
乾燥イラクサのお茶は、牧畜民の伝統的なイラクサの利用方法ではなく、この家のご主人が地元の物産を用いた商品開発を行う中で考案したものである。イラクサのお茶はビタミン、鉄分などの栄養素が豊富に含まれる他、デトックス効果もあることが知られており、今後、イラクサのお茶としての利用もより注目されていくことであろう。
年間を通して利用される野生植物
野生植物の中では、イラクサの他にも、トマ芋やキノコなどが乾燥して保存される。乾燥キノコは売ってしまうことが多いようであるが、イラクサ、そして、トマ芋は、年間を通じて利用される。野生植物は収穫の時期が短いものの、乾燥保存することにより、来客時や、正月などの慶事の食事に利用されている。
文:海老原志穂
写真:海老原志穂、星泉